客観的に守備のうまさを測るデータ

野球において、守備のうまさは長らく主観的な評価によって決められてきました。例えば、派手なダイビングキャッチを決めた選手は「守備がうまい」と評価されがちですが、実際にはポジショニングが悪かったために必要以上に動かされているだけかもしれません。

逆に、見た目の派手さはなくても、打球に素早く反応して簡単に処理する選手の方が、守備範囲が広く、実際にはより優れた守備力を持っていることもあります。

近年、データ分析の進歩により、守備のうまさを数値化することが可能になりました。特に、UZR(Ultimate Zone Rating) や DRS(Defensive Runs Saved) などの指標は、選手がどれだけ守備でチームに貢献しているかを評価する重要なデータとなっています。

UZRは、各選手の守備範囲、送球の正確さ、併殺プレーの成功率などを総合的に数値化した指標です。ある選手が「平均的な野手なら守れなかった打球をどれだけアウトにできたか」を示し、それによってチームの失点をどれだけ防いだのかを評価します。

一方のDRSは、守備によってどれだけチームの失点を減らせたかを直接的に示す指標で、各プレーごとに「期待される結果」と「実際の結果」の差を集計することで算出されます。

野球

データを用いることで守備の評価がより精密になった一方で、数値だけで全てを判断できるわけではありません。野球は状況によってプレーの選択肢が変わるスポーツであり、指標には表れない「試合ごとの文脈」も重要です。

例えば、ある選手がUZRやDRSで優れた数値を記録していたとしても、それが単にチームの守備シフトや戦術によるものかもしれません。

極端なシフトを敷くチームでは、個々の選手の守備範囲が狭くてもアウトが増えやすくなるため、必ずしも「個人の能力」だけを反映しているとは限らないのです。

また、捕手のリードや内野手の指示といった「ゲームメイク力」は、現在の守備指標では数値化しづらい部分も多く、データだけで守備力を語るのは難しい部分もあります。

したがって、守備の評価には、データと主観のバランスが重要です。数値を活用しつつ、実際のプレーを観察し、その選手の特徴やプレースタイルを理解することが求められます。野球の奥深さは、単なる数字では測りきれない部分にもあるため、データだけに頼らず、試合の状況や選手の個性を考慮した評価が理想的と言えるでしょう。