ピッチャーの実力を測る指標が近代化している
かつて、ピッチャーの実力を評価する際に最も重視されていたのが「勝ち星(勝利数)」と「防御率」でした。特に勝ち星は、エース級の投手であれば年間15勝以上を目標とするなど、実力を示す象徴的な数字とされていました。しかし、現代野球では、この2つの指標だけではピッチャーの真の実力を測ることが難しいと考えられています。
勝ち星は、あくまでチームの勝敗に関わる指標であり、ピッチャー自身のパフォーマンスだけで決まるものではありません。どんなに素晴らしいピッチングをしても、チームの得点力が低ければ勝利数は伸びにくくなります。
逆に、打線が強力であれば、平均的な投球内容でも多くの勝ち星を稼げることがあります。したがって、勝ち星だけでピッチャーの実力を判断するのは、適切とは言えません。
一方、防御率は、失点を基準にした指標であり、投手がどれだけ失点を抑えたかを示します。しかし、防御率も絶対的な指標とは言い切れません。なぜなら、守備の影響を受けるためです。例えば、守備力の高いチームでは、凡打がアウトになりやすく、防御率が良くなりがちです。
一方、守備の弱いチームでは、ピッチャーの投球内容が良くても、失策や守備範囲の狭さによって不必要な失点が発生し、防御率が悪化することがあります。このように、防御率はピッチャーの能力を示す有力な指標ではありますが、それだけでは完全に実力を把握することはできません。
WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)は、「1イニングあたりに何人のランナーを出したか」を示す指標で、ピッチャーの制球力や安定感を評価する上で非常に重要な数値とされています。
この指標は、与四球と被安打を合計し、それを投球回数で割ることで算出されます。WHIPが低いほど、相手に出塁を許さない優秀なピッチャーであると判断できます。
WHIPの大きな特徴は、防御率と異なり、チームの守備力に影響されにくいことです。防御率の場合、失策が絡んで失点が増えると数値が悪化する可能性がありますが、WHIPは単純に投手自身が許したランナーの数をカウントするため、より純粋な投球能力を測る指標として機能します。
QS率(Quality Start Rate)は、先発投手の安定性を示す指標の一つで、「クオリティ・スタート」と呼ばれる基準をクリアした割合を示します。クオリティ・スタートとは、6イニング以上を投げて自責点を3以下に抑えることを指し、QS率はこの基準を満たした試合の割合を計算することで求められます。
QS率が高い投手は、試合を作る能力が高く、先発投手としての安定感があると評価されます。特に、シーズンを通して一定のQS率を維持できる投手は、ローテーションの柱として信頼される存在となります。一般的に、QS率が60%を超えると優秀な先発投手とされ、70%を超えるとエース級の評価を受けることが多いです。